●魚と水草の選び方
 熱帯魚飼育を難しいと思うかどうかは、飼育開始後 数ヶ月の間に死なせてしまった魚の数、によるかもしれません。飼い始めてすぐに連続で死なれたりすると 「熱帯魚は難しい!」 と思うようになるかもしれません。お気楽飼育からはじめてなるべく魚を死なせずに、「熱帯魚は楽しい!」と思えるようになったら良いのですが…
  どうか、3ケ月ほどは何があろうとも水槽をリセットせずに我慢してみてください。最初の頃は、魚を沢山死なせてしまったり、トラブル連発なんてこともあ るでしょう。でも、3ケ月ほど維持しつづければ、水槽は安定してくるはずですし、飼い方もそれなりにわかってくると思います。

  設置したばかりの水槽で なるべく魚を死なせないためには、なるべく元気な個体を購入し、魚の数を少なくして、給餌量は不安なくらい少量(≒水質悪化を抑える)、これに尽きると思います。最初の1~2ヶ月は  丈夫な魚を ごく少数 (エサも少なめ!)に抑えておけば、悲しい思いも最小限にできるでしょう。
  もちろん、飼育のコツがわかっていれば 相応の無茶はできるようですが、あんまりおすすめしません。

  ところで、初心者の質問で よく 「○リットルの水槽にどのぐらい魚を入れることができますか」 というのがありますが、この問いは非常に答えにくいです。それは 魚の種類や水槽の環境・状態・飼育者の考え方諸々によって一概に言えないからで、極端なことを言えば「(やりようによっては)何百匹でも飼える」とか 「(やりようによっては)1匹も飼えない」と答えるのもウソにはならない気がします。
  ですから、この問いに対する一番的確な答えは、(冷たいようですが)「自分が入れたいだけ入れたらええやん」ということになるかと思います。もうすこし噛み砕いて答えるなら「最初はすごく寂しいくらいの数に留めておいて、 自分で水槽の様子を見ながら少しずつ足していく」といったところでしょうか。(「自分で」というのが重要。ぶっちゃけ、魚を水槽で飼うということ自体が無茶なので、自分ちの魚や水槽の様子を見ながら「どこまで無茶できるか 自分の感覚として少しずつつかんでいく」しかない気がします。人様の水槽を参考にするのであれば、水量と魚数だけでなく 水槽設備や管理手法も含めて参考にすると良いでしょう)
  ちなみに私自身は、今思えばかなりの無茶をして今に至ってるので、「はじめは魚を少なく!」と強く言うのは気が引けます。確かに、クレバーに事を進めるのが利口なのではありますが、個人的には「最初に色々無茶して失敗を重ねた方が勉強になるんちゃうか?」とか思います。
  まあ、失敗続きで辟易しちゃってもつまらないですから、 無茶は自身の性格相応に、といったところでしょうね。

  そんなわけで(?)、我が家が飼育経験のある魚・水草の中から、おすすめの丈夫なもの(と、注意がいる魚)を紹介してみます。



■■ おすすめの魚 ■■

■青(黒)コリドラス・赤コリドラス・白コリドラス:コリドラスの中でもとっても丈夫。熱帯魚としては ちょっと地味だが、安価だし、容姿もかわいい。ほとんど水槽の底の方にいるし 地味でつまらないという人もいるかもしれないが、飼い込めば立派になる。温和なので よっぽど好戦的な魚とじゃなければうまくやっていける。最初に飼う魚としては最適かと。

■クーリーローチ:外国産のどじょう。ニョロニョロしてるし、昼間はいっつも影に隠れてるのでつまらないかもしれないが、隠れてるから攻撃的な魚とも混泳可能。ウチで飼ってみた感じでは めちゃ丈夫。ヒーターにからまって寝たりもするので火傷に注意(要ヒーターカバー)。

■マーブルグラミー:熱帯魚らしい容姿で 丈夫な魚といえば この辺か。水槽になれてくると むちゃくちゃ綺麗に発色する優雅な中型魚。36cm水槽ぐらいならコレが1匹いれば十分見映える。若干攻撃的になる場合もあるらしいので、その点で ちょっと注意。

■ピグミーグラミー:ちっちゃいグラミー。初期導入時の丈夫さという点ではマーブルグラミーほどではないですが、小型魚の中では強い部類だと思います。小さいながらも とっても綺麗。水合わせを慎重にしてあげれば、その後はかなり強健。

■ベタのメス:闘魚として有名だが、実は思ってるよりは温和な魚。オスベタ同士だと激しく争うが、それぞれが縄張りを主張できるような遮蔽 物を用意してあげれば 他の魚に対しては あまり攻撃しない。特にメスベタは 温和な部類と思います。オスは、ヒレが大きいので水の流れが強いとストレスになるそうで、水の流れがない場所を作ってあげたい。全く温和な魚、とも言えな いので注意が必要だが(エビや超小型魚を捕食する)、とにかく丈夫な魚を、というのであれば おすすめ。

■ゼブラダニオ:水合わせしなくても平気だよ、なんて人がいるほど丈夫で、見映えも割と綺麗。ただ、水槽内をビュンビュン泳ぎ、小型魚(ネ オンテトラなど)を追い掛け回したり 餌を全部横取りしてしまうので、その点では飼いにくい魚。ベタ同様、とにかく丈夫な魚を、という人にはおすすめ。ほのぼの水槽を目指す人にはおすすめしな い。

■プラティ、モーリー:これらもかなり丈夫な感じです。種類にもよるが 大概安価で、その上 色とりどり。殖えすぎて困ってる人もいないではないが、その繁殖させやすさは大きな魅力。

■メダカ、アカヒレ(コッピー):これらは 特に熱帯魚というわけではないが、丈夫で 水温が低くても平気(室内で買っていればヒーター不要)、繁殖もさせやすい。メダカやアカヒレは超小型だが、たとえばネオンテトラなどよりははるかに丈夫 で飼いやすいし、ちゃんと飼えば とっても綺麗に育つ。どうしても熱帯魚を、というのでなければ 検討してみる価値はある。熱帯魚との混泳も可能。

■ミナミヌマエビ、アップルスネール:魚以外にも、エビや貝を入れてみるのも楽しいです。エビの中でもミナミヌマエビは丈夫で殖えやすい。アップルスネールは、淡水で長生きし、大きくなるので楽しい上に苔取り部隊としても有能(但し水草を食害する場合もある)。

  この他にも丈夫な魚は色々います。まともな店なら、お店の人に「水槽セットしたばかりなんですけど、丈夫な魚を教えてください」と尋ねると てっとり早いと思います。
  又、水槽に発生した苔を食べてくれる魚もいますし、魚のほかにも貝やエビなどを入れてみるのも楽しいです。個人的にはアップルスネールやミナミヌマエビが楽しくてお勧めです。
 
  丈夫さとか気にせず気に入った魚を飼っちゃうのも悪くないでしょう。丈夫だというだけで好きでもない魚を飼って後々雑に扱うよりは、多少弱くても めっちゃ気に入った魚を最初から最後まで可愛がるんだ、というのも考え方の1つ。
  と、まあ熱帯魚は本当に色々です。やはり、図鑑で見るより本物の方が迫力があったり綺麗だったり。お店に足を運び、自分の趣味に合わせて魚を開拓していってくださいませ。
 
  いわゆる「熱帯魚」の他にも、ヒメダカやタナゴなどをはじめとして、日本産の魚もいます。通年ヒーターを入れずに飼える魚もいるし、魚以外にもイモリやカ エルなどもペットとして飼えますよ。どうしても熱帯魚を、というのでないなら、調べてみて飼ってみると楽しいでしょう。


■■ おすすめしない魚 ■■

■セルフィンプレコ:丈夫で、ユーモラスな容姿が人気。ホームセンターなどでも安価で売られてるが、かなり巨大に育つ(半年 もすれば20cmほどに)ので、水槽を大きくする予定が無ければ飼ってはいけない。同じくホームセンターなどで安易に買ってしまいそうになる魚でサッカー プレコというのがいるが、こちらは大きくなると強暴になるそうな。大きく育つのが嬉しい向きにはおすすめだが、大きくなられると困る・でもプレコが飼いた い、というのであれば、大人しく・大きくならないプレコもいるので 調べてみましょう。
  同様に、販売時は小さくても、後々巨大に成長する魚も多いので、飼い始める前に熟考を。でも、そういう魚に限って妙に気をひく容姿をしてるんだよね。要注意。巨大になるだけならまだしも、大きくなった魚は餌を大量に消費し、フンも大量です。水質悪化 及び食費との闘いになることは覚悟して吉。

■ラピドクロミスカエルレウス:ホームセンターで売られてる熱帯魚は 概ね丈夫らしく、ラピドクロミスもその1つ。我が家でも無敵の丈夫さを誇っておりますが、喧嘩っ早さも無敵級。熱帯魚らしい派手色だし、この魚だけで飼うなら おすすめの魚とも言えますが、他の魚と混ぜて飼うのは まず無理。
  喧嘩を回避する方法もないではないようですが、1つの水槽で色々飼ってみたいなら 喧嘩っ早い魚・縄張り意識の強い魚は避けるのが無難。バトルが始まったら水槽を増やす・又は縄張りを主張できないほどの高密度飼育をする覚悟が必要。又、一時的には大人しくても、水槽に慣れてきたり成長してきたら急に乱暴者になる魚は多いので要注意。

■ネオンテトラ:安価で丈夫、しかも綺麗ということで初心者におすすめされることが多いようですが、少なくとも初心者の立ち上げ初期水槽で は 丈夫ってほどでもないような気がするんですが・・・最初はホームセンターや量販店で魚を買ってくる人が多いでしょうし、専門店でも小型安価魚を雑に扱って る店もありますし、店によって丈夫さに差がある気がするんですよね。最初の頃はそんなの見極めれないですし、「はじめに飼う魚」としては 私はお勧めできません。
  確かに綺麗でもあり、セール販売されてることも多いので導入しやすい魚ですが、「誰もかれもが薦めるわりには 丈夫ではないかもしれない」ということは覚悟しておいて損はないはずです。良心的なお店で丈夫なものにあたれば皆元気に育ってくれるかも。
  又、ネオンテトラに限らず小型魚は、たとえ丈夫と言われるものでも 水合わせを慎重に。又、「丈夫、飼い易い」と言われていても、立ち上げ初期の水槽では意外にモロかったりすることも多いようです。(図鑑などは概ね玄人さんにより書かれたもので、玄人さんにとっては 「立ち上げ初期の水槽」 は遠い過去の記憶ですもんね?)

  これもやはり店員さんに尋ねてみるのが てっとり早い。現在水槽に入ってる魚を言って、「この魚を入れても喧嘩になりませんか?」。親切なお店なら、色々教えてくれるはずです(「いや全然平気っ スよ~」とかテキトーなことを抜かして買わせてしまうお店もあるそうなので要注意)。
 
  特に気が強いわけではない魚でも、多くは口に入るサイズの魚なら食べてしまうことがあるそうです。そういう場合、餌が豊富なら食べないこともあるようなので、濾過能力をおもいっきり高くしておいて 餌を多めに与える、なんて方法もあるようです。ただ、やはり生餌の方がおいしいと思うので(笑)、要注意。
 
  魚の選択の仕方として、力関係の相性で選ぶ、というのも大事です(強い魚が弱い魚をいじめないように、など)。ですが、魚も生き物ですから、力関係は微妙 かつ繊細です。環境によっては温和と言われる魚でも攻撃的になることもありますし、又、平和な水槽だったのに新しく魚を入れたり模様替えをしたりすること で勢力図が塗り変わることもあります。
  お気楽飼育的には、その辺も込みで楽しむのが吉かと。よく観察してると、魚も馬鹿じゃないというか、人間社会と似てるところがあって面白いですよ。


■■ 丈夫な水草 ■■

 水草は、これまた色んな種類があり、奥が深い世界です。水草の育成に重点を置いた水草水槽という楽しみ方もあるくらいで、伸びすぎたのを切ったり 綺麗に成長するように色々世話をしたりと、いわば水槽内 盆栽ですな。
  まあ、本格的に水草水槽を目指さなくても、ちょっとでも水草を入れれば水槽が見映えすること請け合いよ。水質安定にも一役買うしね。
  でも、「丈夫な水草」・「初心者向け」とされる水草も、綺麗に育てたければ、60cm水槽なら20W2灯は欲しいところ。それ以下だと、多くの水草は長期的にちょっとツラいようです。設備投資をしないなら、枯れたら新しいのを入れるぐらいのつもりで 入れてみましょう。

  それでも やっぱり枯れたら嫌なので、お気楽飼育・お気軽装備(CO2添加なし・60cm水槽に20W1灯程度)でも まず枯れない水草を紹介してみます。

■アナカリス(オオカナダモ):ホームセンターなどでも安価に入手可能。明るい室内なら 水槽ライトがなくてもガンガン伸びる。植えてもいいけど浮かせておいても殖えまくる。環境を整えてしまうと 泣きたいくらい伸びまくる。めったなことでは枯れないので、伸びすぎたと思ったら適当な所でバッサリ切って捨てちゃおう。

■マツモ:繊細に見えるが、こちらもアナカリスと同様の丈夫さを誇る。本来 浮き草なので根を出さないが、植えてみると 和風な水槽になったり。どこでも入手可能というわけではないが、安価な草なので、魚を買った店に置いてあればとりあえず買ってみて吉? 1本20円とか そのぐらい。

■ミクロソリウム:こちらも相当丈夫。成長の早い水草ではないが、ちょっとしたライトがあれば十分育つ。根っこを流木などにくくりつけてお くと 流木に根付いてくれるので、水槽掃除や模様替えの時に気軽に動かせるのは本当に便利。1000円前後するが、「何でもいいから水草入れておきたいな」とい う場合に、安い水草を入れては何度も枯らしてしまうよりはずっと安上がり。お気軽管理水槽とは思えない立派な雰囲気になるのでおすすめ。
  尚、成長が遅いため苔に覆われやすかったりもするようです。苔対策としてエビやオトシンクルスという魚を飼ってみると吉。

■ハイグロフィラ:正式名「ハイグロフィラ・ポリスペルマ」、略して「ハイグロ」の名で売られてることも。環境にもよるのかもしれないが、 我が家の水槽では 葉っぱ1枚からでも根を出し成長する根性を見せ、光量も蛍光灯1本程度で充分。手をかけ 綺麗に育てると 本当に綺麗らしいが、「枯れなきゃいいや」で適当に植えておいてもそれなりにいい雰囲気。

■スクリュー・バリスネリア:上記4種ほどではないが、ムードのある水草の中では丈夫な部類。びろびろと ねじれたテープ状の水草で、水流になびいて楽しい。ある程度の光量はあった方が良いようだが、うまくいけば蛍光灯1本程度でも枯れないかもしれない。枯れ たように見えても、環境にあわせて復活することがある。地下茎で増える子株も楽しい。

■マゾンフロッグピット:浮き草。小さい睡蓮みたいな感じで、増えすぎると水槽内が暗くなる(他の水草が枯れる場合がある)ので、適度に捨 てちゃおう。水面下に根を伸ばし、草食傾向のある魚だとそれを食うので、その場合は育ち難いかもしれないが、蛍光灯1本あれば まず枯れない。風通しをよくしやると 爆発的に増える反面、ぴっちりガラスフタをしているなど、蒸れた状態だと 育ち難い面アリ。

■リシア:これも浮き草。沈めて使うのが流行っていて、「CO2と高光量が必要」なんて言われているけど、そりゃ無理矢理沈めてるからだ。 ちょっとしたライトがあれば、浮かせておけばまず枯れない。いや、浮かせて増やしてもそんなに綺麗でもないんだけど、ガシガシ増えて 養分(≒水の汚れ)を吸収してくれるので水質悪化をやわらげてくれることうけあい。(その辺はアナカリスやマツモも同じ。)

■エキノドルステネルス/ピグミーサジタリア:ちょっと水草レイアウトに興味が出てくると、前景用の(背の低い)水草が欲しくなってくると 思うんですが、水槽の底の方というのは光が当たりにくいので水草が育ち難い!…そんな中で、どうにか育ってくれそうなのがこの2種(安くてポピュラーなも のの中では)。60cm水槽で20W2灯を確保できれば問題なく増え、1灯でもうまくいけば耐えてくれるかも。植えた根元にほんの少量の肥料を入れてあげ るとよく増える。

  水草も色々入れてみたくなるもので、上手く育てるために設備投資をしたりと、ハマり出すと魚より手間とお金がかかります。要注意(笑)。

最初は気軽でいいのだ!
これだけは覚えておきたい14ヶ条
魚と水草の選び方
魚が死んでしまう?
餌の量を見極めよう!
最後に

熱帯魚飼育入門